多汗症の治療法(手術療法:胸腔鏡下交感神経節切除術

当院では手掌多汗症に対しては手術療法を行っています。
手掌多汗症の手術には、『胸腔鏡下交感神経節切除術』があります。
以前は胸にメスを入れて大きくあけて(開胸といいます)直接交感神経を見てさわって切除していたのですが、この方法では体に対する負担(手術侵襲といいます)が大きすぎるため、よっぽどのことがない限り行われることがありませんでした。
当院で行っている胸腔鏡下交感神経節切除術は、内視鏡を使って胸部交感神経節(幹)を見ながら切除する方法です。最近の内視鏡カメラの発達により、小さい穴からでも同様の手術が行えるようになりました。
この方法は熱を送って神経を焼き切る方法で、この分野ではもっとも症例の多いNTT東日本関東病院(旧関東逓信病院)と同様の方法(Claesの方法といいます)を用いています。

手術方法

    • 片側の胸に1つの穴をあけ操作する方法です。
    • 手術時間は通常10~20分程度です。
    • 当院では手術手術当日入院・翌日退院の1泊2日コースが一般的です(入院日数については術前検査などのかね合いもありますので、必ず事前にご相談ください)。
    • 当院で手掌多汗症の方に対して行っている手術療法は、以前は同一日に右と左の両側の手術を行う方法でしたが、現在は右側と左側を別々の日に手術する方法になります。これは、先にどちらかだけ手術して代償性発汗の多い夏などを経験していただき、数ヶ月手術の効果を体験していた結果でもう一方も手術を行うかどうか決めるものです。 両側同時の手術になると、まれに術後に代償性発汗を気にしてまた元に戻してほしいと望む方がいらっしゃいます。しかし現在の状態では、一度手術したら元に戻す方法はありません。
      片方だけの場合、代償性発汗が両側同時に比べ半分以下になります。左右の手のひらで汗の量が全く違うのは不便ですが、手術の影響で手術しなかった手の汗も多少減る傾向にあります。そのため当院では、原則的にはまず利き腕側の手術を行い、場合によってはその後夏の暑い時期を経験した後でもう一方の側の手術を行う方法を用いております。

 

手術の適応(手術を受けてメリットがあると考えられる方)

    • この手術の対象になる方は、手のひらに汗の水玉ができるか、手から垂れるほどの汗が出るような方です。
      手の汗が多い方のみが対象(適応)となる手術であり、わきの下の汗がメインである腋窩多汗症の方は適応にはなりません。また、手の症状が主であっても、場合によっては、手術の対象にならない方もおりますので、必ず医師の診察を受けて下さい。
      手掌多汗症の手術(胸腔鏡下交感神経節切除術)の費用には健康保険が使えます。ただし、薬物療法など他の治療法が無効な時にだけ保険の適応になりますので、すぐに手術はできません。